IPO労務管理でまず始めることは

皆さんこんにちは、IPO労務支援サポーターの
立部です。
今回は、「IPOを目指すことになったが、労務管理については何から対策を
したらいいのかわからない」というご質問にお答えします。

IPOにおける労務管理について

現在、IPOを目指すにあたっては労務管理についても大変重要な論点となっております。
「日本公認会計士協会 株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」には以下の記載があります
(一部追記しております)

IPOに際しては、労務管理も重要な内部管理体制の整備項目と言えます。また、全ての会社は労働に
関する法令を遵守する必要があり、勤怠管理、残業代の適正な支払、社会保険の加入状況、
安全衛生管理などへの対応が求められます。労働基準監督署の調査の状況もIPOに重要な影響があり得ます。
特に、未払残業代は、会社の簿外債務となりますので、決算にも影響する項目です。

労務管理については、人事・総務部門を中心に法令遵守の状況を確認しておく必要があります。
また、社会保険労務士なども活用し、就業規則、給与規程、雇用契約書や36協定などを踏まえて、
未払残業代の有無についても確認していきましょう。その結果、過年度の未払残業代があれば、
社会保険労務士、監査法人やアドバイザーと協議し、適切な対応をすることが必要です。

上記の通り、企業がIPOを目指す場合、労務管理の分野においては、主に労働に関する法令遵守状況を
確認しながら、法令遵守ができていない項目については改善策を講じる必要があります。

法令遵守の難しさ

ただ、法令遵守をしていくとしても、どこまでの改善をするべきであるのか不明なことが
多いのではないでしょうか。特に労務管理の項目の中には、法令上ではしっかりとした
定義がないものもあり、「何を」「どこまで」するべきかという点が明確でない項目もあります。

例えば「勤怠管理」一つを取り上げても

「勤怠管理ツールはどれがいいのか」
「勤怠記録は本当に1分単位にしないといけないのか」
「勤怠システムを使用しているが、従業員からの打刻漏れが多くても大丈夫か」
「ログ管理がいると聞いたが、一体何をどこまでしないといけないのか」


このように様々な疑問が発生することが多いです。また、先ほど触れましたとおり、
労務管理の分野については明確な答えが法令上にないことも多いことから、企業の
独自の
判断で対策を進めていくと、
IPOの達成のために必要な改善とは異なった
対策に進んでしまう可能性もあります。

まずは労務監査の実施

上記より、IPOに向けた確実な労務管理の改善を進めていくには、できる限り早い
段階で外部機関による労務監査を実施することをお勧めしております。
労務監査を実施することにより、企業が得られるメリットとして大きく以下の4点があります。

①現状の自社の労務管理状況が把握できる
②未改善の項目について、どの部分に問題があるか理解できる
③改善の論点が明確化され、外部のアドバイスを受けやすくなる
④主幹事証券会社、監査法人等の審査対応が円滑になる

では、それぞれについて解説致します。

現状の自社の労務管理状況が把握できる

こちらは労務監査を行い、自社の労務管理の状況を網羅的に調査してもらうことにより、
特に問題がない項目、改善が必要な項目が一覧でわかるようになります。よって
どの項目が改善の必要があるのかが把握できるようになります。

未改善の項目について、どの部分に問題があるか理解できる

例えば上記に記載した「勤怠管理」についても、勤怠管理のどのような点の対策が必要になるのかが
具体的にわかるようになります。例えば弊所で実施した過去の労務監査の報告書においても
以下の通りのご指摘をさせて頂いたことがあります。

【現在の状況】
勤怠システムを導入しているが、営業職については打刻を実施していない。
【改善すべき事項】
営業職であっても、全ての労働者について労働時間の把握義務があるため
打刻を基本とした勤怠管理が必要がある。

 

【現在の状況】
A事業所においては、入退室管理システム用の個人ICカードがあり、
入退室ログが取れる状況になっている。
【改善すべき事項】
A事業所においては、入退室管理システムの記録と勤怠記録と照合する
ことにより、サービス残業を防止する仕組みを構築する必要がある。


というように、企業側が「何を」「どこまで」改善をする必要があるかが理解できるようになり、
改善の方向性が明確となります。

改善の論点が明確化され、外部のアドバイスを受けやすくなる

労務監査を実施すると、上記のように各項目ごとに改善の論点が論点が明確化されます。
それにより、社会保険労務士やアドバイザー、主幹事証券会社などの外部からのアドバイスが
具体的に受けやすくなります。

主幹事証券会社、監査法人等の審査対応が円滑になる

IPOを目指すにあたっては今では労務監査の実施はほぼ必須となっています。もし労務監査を
実施していないとなると、例えば主幹事証券会社や監査法人等の審査を進めていくにあたっては、
企業の労務管理の実態が見えない状態となります。その場合は労務管理の状況が疑わしいという
認識となり審査が円滑に進まなく可能性もあります。

よって、労務監査を実施することにより、この「疑わしい」という状況は払拭されます。
また、実際の審査時においてもその審査内容が「労務監査の実施を受けて企業で改善を行った状況」
についてが大きな論点となります。そうすると企業側としても、審査の内容に不意打ち的な項目が
なくなる(既に把握している論点)ため、IPOに向けて円滑に進んでいくことになります。

まとめ

IPOを目指すにあたり、企業の労務管理の状況は今では重要な論点となっております。
しかしながらどのように対策を講じていけばいいのかがわからない事が多いと思います。
本格的にIPOを目指すとなった際には、
早期に外部機関による労務監査を実施することにより、
改善点を明確にすること。そしてその項目について効率的に改善を行っていくこと。
これらが重要な論点になります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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