IPO労務管理における勤怠管理その1(労働時間の記録)

皆さんこんにちは、IPO労務支援サポーターの
立部です。
今回は「IPOを目指すにあたり、労働時間は1分単位で計算しないといけないですか」であったり
「何か勤怠システムを導入しないといけないですか」というような、労働時間の記録に関するご質問に
お答え致します。

労働時間の適正な把握

厚生労働省から発出されている「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
によると、始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法について、以下2点が示されています。
(下線部が抜粋です)

①使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、
適正に記録すること。

また、同ガイドラインでは、上記①、②のどちらの措置も取れずに、自己申告制で始業・終業時刻の確認及び
記録を行う場合は、5点の措置を講ずることとされています。ガイドラインの5点の要約を以下に記載致します。

①労働者本人に対し、労働時間を正しく適正に記録する旨の説明を行うこと。
②労働時間を管理する者(管理者)に対し、労働時間の記録に関する適正な運用の説明を行うこと。
③記録された労働時間が実際の労働時間と合致しているかについて、必要に応じて実態調査の実施
および労働時間の補正を行うこと。
④記録された労働時間を超えて会社にいる場合、その実態が労働している状況の場合はその時間を
労働時間としてカウントすること。
⑤会社から労働者に対し、労働時間の適正な申告を阻害する措置の禁止。

上記の通り、労働者本人の自己申告制による始業・終業時刻の確認及び記録の方法を採用する際は、
ガイドライン上で示されている多くの制約をクリアした形で労働時間の管理を実施しなければいけません。

IPO労務の勤怠管理の手法

IPO労務の勤怠管理の原則は、ガイドラインの②で示されている「タイムカード、ICカード、パソコンの
使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」の措置を取ることが
ほぼ必須となります。

理由としては、使用者が自ら現認する方法の場合は、全ての労働者について使用者が自ら現認をしたという
証跡を残すことは事実上不可能です。また、自己申告制で記録を行う場合は、上記で述べた5点の措置が適正に
なされているかどうかを証明することが必要となります。しかしながらこの証明は
極めて困難なことから、
自己申告制の場合はIPOの審査が非常に進みづらくなります。よって、やはり何かしらの客観的記録が
取れる方式(タイムカードや勤怠システム)を導入する必要があります。

また、IPO労務においては、労働時間の論点として他に「労働者本人の打刻漏れの防止」「管理職による打刻の承認」
「人事部門による月の途中での労働時間の推移についてモニタリング」などの実施があります。
よって例えば紙のタイムカードを打刻する方法を採った場合、タイムカードの原本は原則各現場にしか存在しません。
そうすると例えば「人事部門による月の途中での労働時間の推移についてモニタリング」を実施するとなると、
人事部門が各現場に赴いて確認を行う方法しか取れません。そうすると適切に運用ができなくなる
可能性が高くなります。

よって勤怠システムなどの導入により、管理職や人事部門が各現場に赴くことなくシステム上で即時に
従業員の勤怠記録を確認できる方法の導入が事実上必須となります。
(労働時間の打刻漏れの防止、管理職による打刻の承認、労働時間の推移についてのモニタリングなどの
詳細については後日のブログにてアップ致します)

労働時間の記録の単位

次に労働時間の記録の単位について考えます。
参考となる通達として、昭和63年3月14日付け基発150号の通達があります。その通達では労働時間の
端数処理の方法について以下の通り定められています。(下線部が抜粋です)

1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、
30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。

労働時間の端数処理に関して定めた法令や通達は上記の通達以外は実は存在しません。
よって毎日の労働時間を例えば「15分まるめ」として、時刻の端数を切り捨てを日々行った場合は、
打刻された時刻と労働時間の計算で使用する時間で乖離が発生します。
IPOの審査においては、日々の端数処理を行った場合は、その切り捨てられた時間に本当に労働を
していなかったかという疑義が生じる可能性が高いです。そして、審査上それが問題となる場合は、
その切り捨てた時間に本当に労働をしていなかったかという証明が必要となります。

IPO労務に関わらず、上記の日々の労働時間の切り捨ての論点については問題となることが多いですが、
IPO労務においてはより厳密な勤怠管理が求められることから、この日々の端数処理は審査上
大きな論点となる可能性が高いです。よってこの日々の労働時間の切り捨てが発生している場合は、
現在ではIPOの審査が進まなくなる可能性が高いため、日々の労働時間については原則通り
1分単位で記録および計算を行う必要があります。

残業許可制について

上記の労働時間の記録の単位とあわせて、労働時間の切り捨ての論点の中にいわゆる
「残業許可制」があります。
IPO労務において、この残業許可制を運用していることにより審査が通らないということではありません。
しかしながら、残業許可制を運用していることにより、上記のガイドラインの自己申告制の場合の⑤
「会社から労働者に対し、労働時間の適正な申告を阻害する措置の禁止」の論点が発生する可能性があります。

これは残業許可制を運用することにより、労働時間として残業をしていると記録は残っているが、
その時間を残業として許可しなかった場合、許可しない部分は労働時間を切り捨てることになります。
そしてその結果、勤怠の打刻時刻と残業を許可した時刻との間で乖離が発生することになります。
その状況になった場合は、上記に述べた通り、その切り捨てられた時間に本当に労働を
していなかったのか証明が必要となることがあります。

よって、労働時間の切り捨て(丸め時間の運用や残業許可制など)については、IPO労務の審査上、
疑義領域を増やす要因となります。よって
できる限りこの論点を発生させないことが審査がスムーズに
進むための近道となります。

まとめ

IPO労務において、この勤怠記録については特に重要な論点です。またこの勤怠記録を出発点として、
36協定違反、長時間労働、賃金未払などの論点に繋がっていくことから、この勤怠記録の論点がクリアしない限り、
IPOの達成が非常に厳しくなります。
よって、「勤怠システムの導入」「労働時間の記録の単位は原則1分単位」「残業許可制は極力運用しない」
という3点がIPO労務をスムーズに進むための大事なポイントとなります。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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