IPO労務管理における勤怠管理その2(勤怠の承認・運用)

皆さんこんにちは、IPO労務支援サポーターの
立部です。
今回は「勤怠システムを導入し、1分単位で記録をつけていますが、さらにIPOの
勤怠管理において何か対策は必要でしょうか」という質問にお答え致します。

労働時間の適正な記録と運用

以前のブログにて、IPOにおける勤怠管理の原則として、「勤怠システムの導入」、
「日々の時間の記録は1分単位」、「勤怠の切り捨てに繋がる制度は極力導入しない」などに
ついてご説明致しました。

詳しくはこちらをご参照下さい。
IPO労務管理における勤怠管理その1(労働時間の記録)

ただ、上記の運用を開始したとしても、その状況だけで適正な労働時間の運用ができているとはまだ言えない
状況であると考えます。例として、たとえ勤怠システムを導入していたとしても、日々の打刻漏れが頻繁に
発生しているような状況であれば、適正な勤怠記録が
できているとはいえない状態です。
よって、適正な勤怠管理を実施するためには、さらに以下3点の運用が求められます。

①日々の記録が正しく行われていること
(日々の打刻漏れの防止)
②部下の打刻記録を上長が都度確認を行って
いること(管理職による承認)
③記録された労働時間から、36協定の特別条項の発動漏れや上限時間超えの防止などに
繋げていくこと
(人事部門によるモニタリングの実施)

では、上記3点について具体的に解説します。

日々の打刻漏れの防止

まず打刻漏れの防止についてですが、こちらはシンプルに個々の従業員が日々の打刻を忘れずに
行うことが求められます。例えば月末などで一気に打刻や申請を行うような「まとめ打刻」などは、
従業員の記憶を元に記録を行うことになり、適正な労働時間が記録できているか怪しい状況になります。

よって、このようなまとめ打刻を禁止することはもちろんの事、日々の打刻漏れが起こることのないように、
従業員に対し指導や教育を都度行っていく必要があります。

管理職による承認

しかしながら、上記の打刻漏れ防止のために指導や教育を行ったとしても、100%打刻漏れがない
状況にすることは現実的に困難です。また、出張や直行直帰などにより物理的に打刻ができないと
いう状況も考えられます。

上記のような状況が発生した場合は、従業員が事後速やかに申請や打刻修正を行うことが大前提です。
ただ、従業員だけの努力で打刻漏れを防止する状況ではまだ不十分であると考えます。
よって、次の段階として、管理職による勤怠記録の承認プロセスを入れることが推奨される勤怠管理です。

管理職による勤怠記録の承認プロセスを入れることにより、部下の打刻漏れの発生状況について管理職も
確認をすることになります。そうすると、部下の勤怠記録で打刻漏れが発生し、そのまま放置されて
いたとしても、管理職が確認し、本人に注意や指導を行うことで、打刻漏れが放置されているという状況を
避けることができます。

また、勤怠管理の論点とは少し離れますが、管理監督者の論点においても、部下の勤怠承認の権限の有無は
大きな論点となります。よって管理職が労働基準法上の管理監督者として運用している場合、
部下の勤怠の承認権限を有しているということは、その管理職の管理監督者性を高めることができます。

上記により、打刻漏れの防止の観点だけでなく、管理監督者の観点からも、管理職による部下の勤怠記録の
承認プロセスを入れることは推奨される勤怠管理です。

そして管理職が部下の勤怠承認を行う時期についてですが、本来であれば日々承認を行う事が理想です。
しかしながら、そのような運用は現実的には困難であると考えますので、少なくとも1週間に1回程度、
部下の勤怠の承認を行うことが推奨される勤怠管理です。

人事部門によるモニタリングの実施

上記の「日々の打刻漏れの防止」「管理職による勤怠承認」に加えて、人事部門において月の途中で
各従業員の勤怠の記録状況等をモニタリングすることも推奨される勤怠管理です。

この目的は、上記の「日々の打刻漏れの防止」「管理職による承認」を行っていてもまだ打刻漏れが
残っている状況の場合は、人事部門より該当の従業員や管理職に通知・指導を行うことで、
より適正な勤怠記録へ繋げていくことが目的となります。

上記に加え、人事部門によるモニタリングの大きな目的は36協定違反の防止です。

36協定の論点の一つに、「特別条項の事前発動」というものがあります。これは「特別条項付きの36協定」を
締結している場合、月の時間外労働が45時間(1年単位の変形労働時間制を適用している場合は42時間)を
超える場合は、36協定にて定めた方法にて特別条項を発動する必要があります。

そしてこの特別条項を発動する時期は、月の時間外労働が45時間を超える前までに発動する必要があります。

尚、月の時間外労働が45時間を超えた後に事後的に発動することは、36協定違反となります。
このように、特別条項の事前発動を実施するためには、月の途中で時間外労働の
状況を把握するモニタリングを行なわないと実施することが不可能です。

さらにもう一つ、36協定の大きな論点として、36協定で定めた時間外労働の上限時間を
超える時間労働が発生していないことという論点があります。

この36協定で定める時間外労働の上限時間を超えた時間外労働が発生している場合は、重大な36協定違反であり、
IPOの審査においても重大事項として取り扱われ、審査に大きく影響を及ぼします。

よって、人事部門による月の途中での勤怠記録をモニタリングすることで、特別条項の事前発動の実施や
36協定で定めた時間外労働の上限時間を超過する時間外労働の防止に繋げることがとても重要となります。

※36協定の詳細な論点につきましては、後日のブログでアップ致します。

まとめ

IPO労務の勤怠管理は、単に「勤怠システムの導入」や「1分単位の記録」など、システムやルール面の
整備だけにとどまりません。労働時間の適正な記録の運用をするために、「各従業員」「管理職」「人事部門」の
3者においてそれぞれ「打刻漏れの防止」「勤怠の承認」「月の途中のモニタリング」の徹底が求められます。

これらの運用を徹底的に行うことにより、ようやく適正な労働時間の把握と運用の実現が可能となります。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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