IPO労務管理と通常労務管理の違いについて

皆さんこんにちは、IPO労務支援サポーターの立部です。
今回は「
IPO達成のための労務管理は通常の労務管理とは何が違うのですか」
という質問にお答え致します。

IPO労務監査と通常労務管理との相違点

IPOを目指す、目指さないに関わらず、企業は従業員を雇用した時点で労働や社会保険に
関する各法令を遵守する必要があります。ただし、同じ法令遵守においても、通常の労務管理と
IPO達成のための労務管理はその目的や深さについて少し違う点があります。
今回はその相違点を以下3つの観点から解説を致します。

①法令遵守の目的
②過去の債務の精算
③法令遵守の深さ

①法令遵守の目的

通常の労務管理においては、法令遵守を行う目的が「労働者との紛争の防止」や
「労働基準監督署をはじめとする行政からの指導の回避」など、個別の対応を主な目的として
行うことが多いです。よって、労働者との個別の紛争が発生したり、行政からの指導勧告が
出された時に、その是正や再発防止のために整備を行うことが多いです。そしてそもそも
上記のような事態を発生させないための労務管理が主流となります。

しかしながら、IPOの労務管理の場合、取引所の審査を通過できる労務管理が実施されているかが
主な目的となります。それは企業と労働者との間の紛争や行政からの指導が実際に発生していなくても、
「発生する可能性」がある状態であれば審査が滞る可能性があるためです。

よって、IPOの労務管理については、企業で労務面で特に問題が起こっていなかったとしても、
起こる可能性がある状態を限りなく排除することが求められます。

過去の債務の精算

通常の労務管理の場合、例えば未払賃金が発生していた場合の債務の精算については、
個別に対応する場合多いです。具体的には、労働者からの訴えがあったり、労働基準監督署からの
是正指導があった場合の未払賃金について、その訴えを起こした労働者のみであったり、
労働基準監督署が指定する範囲の労働者に対して行うことが多いです。さらにその精算の期間に
ついても、個別に決めて行うことになります。よって他の労働者については、
未払賃金の精算を行うかどうかは企業の個別の判断で行うことになります。

他方、IPOの労務においては、特に問題が発生していなくても原則は退職者も含む全ての
労働者に対しての精算が求められます。そしてその期間は法令上の権利がある分
(例えば未払賃金であれば過去3年分)全て行う必要があります。理由としては上記に記載した
目的でも触れておりますが、企業と労働者との紛争や行政からの指導が「発生する可能性」が
ある状態であれば審査が滞る可能性があるからです。

法令遵守の深さ

通常の労務管理においては、「法令遵守」ができているかという点を重視して整備を行っていきます。
よって法令で詳細が決まっていない点については、ある程度会社の考えで運用を進める事が多いです。
そしてその詳細が決まっていない点について企業と労働者との間で紛争が起こった場合は、
その紛争の結果次第で対応するということが多いです。

IPO労務においては、企業と労働者との紛争が「発生する可能性」をなるべく排除する必要があるため、
このような法令で決まっていない点についても、紛争が起こる可能性をなるべくなくした労務管理の
運用が求められます。

例えば管理監督者制度の場合、法令では管理監督者に該当する明確な基準はありません。
そして通常の労務管理であればある程度会社で管理監督者の基準を決めて運用することになります。
ただしIPOの労務においては、過去の裁判例なども参考にしながら、管理監督者制を「否定される」
恐れのある要素をなるべく排除した運用が求められます。

このように、ただ法令遵守をしていればいいというわけではなく、項目によっては裁判例なども
参考にした労務管理行うことで、企業と労働者との紛争が「発生する可能性」をなるべく排除する
運用をしていくことになります。

まとめ

IPO労務管理は通常の労務管理と違うこととして、

① 企業と労働者との紛争や行政からの指導が発生する可能性をなるべく排除すること
② ①の達成のために、債務が発生している場合は全て精算を行うこと
③ 法令遵守だけでなく、裁判例も参考にして、①を目指す必要があること

上記になります、よってこれらのことを念頭において、必要に応じて専門家からの助言を
受けながら労務整備を行っていくことがIPOの労務整備の近道となります。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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